今週もラジオ配信しました。



レガトゥスのことなんかもポジりながら話してるけど、今日のメインテーマはユニコーンS。中でも17年に単勝1番人気に支持されながら7着に敗れたリエノテソーロと、戦前に武井亮調教師が強気のコメントを連発しまくっていたことについて、今さらながら振り返ってみた。

この件については当時ブログにも書いていて、

□ 【予想■ユニコーンS】打倒リエノテソーロ大作戦

□ 【回顧■ユニコーンS】勝負に勝って馬券で..(´・ω・`)ショボーン

「武井語録」も簡単には紹介しているのだが、どうせなら記事全体を読んでもらった方がその破壊力が伝わるだろうということで、これを機に改めて記事を引用してみることにした。競馬界におけるビッグマウスの伝説といえばブレーヴハートやコンゴウダイオーなんかが有名だけど、それらにも負けず劣らずの傑作揃いである。

それでは準備はいいか。


● リエノテソーロ伝説その1:「ダートなら“怪物”になれる素質がある」
ユニコーンSの主役候補は、芝&ダート“二刀流”で活躍中のリエノテソーロ。前走のNHKマイルCでは13番人気ながら2着に入り波乱を演出したが、それでも武井師は「芝でも力は見せてくれたが、ダートならもっとやれると思う」と話す。本質的にはダート馬という見方は一貫して変わっていない。「ダートなら“怪物”になれる素質がある」と期待を寄せている。

■ 【ユニコーンS】リエノ ダート新女傑へ自信「怪物になれる」 - スポニチ


● リエノテソーロ伝説その2:「得意条件でぶっちぎってほしいですよね」
指揮官が高らかに言い放つ。「得意条件でぶっちぎってほしいですよね」。武井師が自信満々に送り込むリエノテソーロ。底知れぬ魅力を持つマル外牝馬が、初の中央タイトルへ盤石の態勢で臨む。

 NHKマイルCは13番人気で2着。芝でも高レベルの走りを見せているが、陣営は本質的にダート向きとのジャッジを下す。「芝でもいいけど、ダートの方が走りますよ」との言葉通り、これまではワンサイドゲームで2戦2勝。昨年12月の全日本優駿でも3馬身差の楽勝を決めた。怪物となり得るなら砂路線との見立てだ。

 前走後はここを目標に順調そのもの。「疲れはすぐに回復してすごく良くなった。弾むような動きになっています」と相変わらずケイコの動きは力強い。新コンビを組む大野も1週前追いにまたがり、「“さすが”という感じ。癖がなく注文は付かない。ええ、楽しみですよ」と期待に胸を膨らませている。

 「いずれは千二〜千四がベストになりそうだけど、マイルも前走のG1で2着。ここなら底力が上でしょう」とトレーナーはきっぱり言い切った。G3は通過点。他を圧倒するパフォーマンスで、砂の頂点を目指していく。

■ 【ユニコーンS】リエノテソーロ自信の出陣 芝G1でも2着の砂女王 - デイリー


● リエノテソーロ伝説その3:「レース後に“何で芝のG1・2着馬がダートを使ったの?”なんて言われないように、いい結果を出さないとね」
【ユニコーンS(日曜=18日、東京ダート1600メートル)注目馬14日最終追い切り:美浦】リエノテソーロ(写真右)は南ウッドで同厩の3歳500万下を4馬身追走。コーナーで内に潜り込んで差を詰めると、直線では軽く仕掛けられた程度で鋭伸。楽々と3馬身突き放して格の違いを見せつけた(4ハロン52・8―38・2―12・2秒)。

 武井調教師「すごくいい動き。前回も100%のデキだと思いましたが、まだ上がありましたね。距離にメドは立ったし、芝よりもダート向き。レース後に“何で芝のG1・2着馬がダートを使ったの?”なんて言われないように、いい結果を出さないとね」

■ 【ユニコーンS】リエノテソーロ 楽々3馬身先着「前回も100%のデキだと思いましたが、まだ上がありました」 - 東スポ


● リエノテソーロ伝説その4:「ここで結果を出さないと“あいつ何やってんだ”と言われる。それは困る。」
 「ソエ(若駒特有の管骨の痛み)明けの前走もいい出来にはあったが、臨戦過程がより順調な今回は今までで一番の出来。キャンターの時から弾み方が違う」と武井師も胸を張る。「ここで結果を出さないと“あいつ何やってんだ”と言われる。それは困る。でも、やはりダートで走ると思う」。デビューから変わらぬ評価を証明するには、勝利しかない。

■ 【ユニコーンS】まるで2段ロケット!超絶加速リエノテソーロ - スポニチ


● リエノテソーロ伝説その5:「3歳世代では、エピカリスとうちの馬がダートではトップですから。」
「(6月14日に開催された3歳牝馬限定の地方交流重賞の)関東オークス(川崎・ダート2100m)出走も考えました。(出走しなかったのは)距離うんぬんではありません。(リエノテソーロの)力が抜けているので、十分勝負になったと思います。それよりも、この馬は将来的にはGIフェブラリーS(東京・ダート1600m)を勝てる馬だと思っています。そこで、東京・ダート1600mの重賞を経験しておきたかったんです。

 そうすると、ユニコーンSのあと、同条件で行なわれるのは秋のGIII武蔵野Sしかなくて、そこでいきなり古馬牡馬とぶつかるのは厳しいかな、と。可能なら、秋にはJBCスプリント(大井・ダート1200m)出走も考えているので、今回はユニコーンSを使ったほうがいいと判断しました」

 先々の大いなる野望を口にした武井調教師。「ベストはマイルまでと思っているとはいえ、距離は未知数なんですよね」といたずらっぽい笑顔を見せ、今回いい内容で走れば、距離を伸ばして3歳馬のダート頂上決戦となる地方交流重賞ジャパンダートダービー(7月12日/大井・ダート2000m)出走の可能性も示唆した。

「3歳世代では、エピカリスとうちの馬がダートではトップですから。エピカリスがいないここでは、きっちり格好をつけないと」

 36歳の気鋭の伯楽は、さわやかな笑みを浮かべた。だが、その眼差しからは強い意志が感じられた。ダート界に新たな「女傑」がまもなく誕生するかもしれない。

■ 調教師が「夢」を激白。ユニコーンSは新女傑リエノテソーロで鉄板! - webスポルティーバ




最後はwebスポルティーバでまあまあの長編コラムまで組まれているという盛大なフラグっぷり。それにしてもよくここまで強気になれたもんだ。
教訓とすべき点は2つ。3歳になってからダートを走っていないのに、全日本2歳優駿を勝った実績だけを鵜呑みにしてダートでの素質を過大評価してしまったということ。それから、NHKマイルCで2着に激走してしまったもんだから、「芝でこれだけやれるのならダートはもっと強い、だってダートの方が得意なんだから」という、筋が通っているようで通っていない理論を押し通そうとしてしまったこと。それらの誤った判断が、ここまで盲目的に自信を深めさせることになってしまった。

これだけの夢を描いた結果が7着では、さぞかしショックも大きかったことだろう。

第22回ユニコーンステークス(18日、東京11R、GIII、3歳オープン国際(指)、別定、ダ1600メートル、1着本賞金3500万円 =出走16頭)6Rで負傷した大野騎手から内田騎手に乗り替わった1番人気のリエノテソーロは、7着に敗れた。道中は4番手を進んだが、直線で伸び切れず失速した。「イメージ通り運べたし、ちょうどいい位置を取れた。なんとなくで終わってしまった。敗因はわからない」と内田騎手は首をかしげた。「レース前は今までで一番落ち着いていたけど、前もかわせずいっぱいになった。敗因は距離くらいしか思いつかない。ショックは大きい」と武井調教師は落胆の表情を浮かべた。

■ 【ユニコーンS】リエノテソーロ、直線で失速7着 - サンスポ




こうしてリエノテソーロ伝説は静かに幕を閉じた。もちろん馬自身に罪はないし、その後も怪物にはなれなかったものの牝馬限定の交流重賞を制したり、芝のG1にも再挑戦したりと十分な活躍を見せた。にもかかわらず、こうしてネタ要員として後世に語り継がれることになったのは、間違いなく一連のビッグマウスがあったからに他ならない。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉があるように、とかく日本では謙虚な姿勢が美徳として扱われる。大口を叩くのは、よほどの成果を残した者のみに許される特権のような印象すらある。その文化の中で生きる身でありながら、立てる必要のないフラグを立ててしまった武井調教師の進軍ラッパは、勝負の上では不必要なものだったと言えるだろう。おかげで楽しませてもらったけれど。

ただ、本人の名誉のために書いておくと、武井厩舎は開業2年目からコンスタントに20勝以上を挙げている優良な厩舎である。管理馬のラインナップを見ても、ノーザンファームの外厩頼りではなく多岐にわたる馬主さんの所有馬で結果を残しており、今後ますます活躍の場を広げていきそうな気配。まして年齢も若い。
調教師自身にリエノテソーロ伝説が教訓となって活きているのかはわからないが、この先どれだけ時が経っても忘れられないレースなんじゃないだろうか。