東京新聞杯の落馬事故は色々な意味で後味の悪いものになってしまいましたね..
単勝1番人気のダッシングブレイズが、
内ラチに衝突する形でバランスを崩しジョッキーが落馬。
予期せぬアクシデントが発生してしまいました。

もちろん浜中騎手の容体を案じるのが一番でしたが、
結果的に5万円の過怠金が課されたように、
今回の事故はいわば「自業自得」によって起きたもの。
通ってはならないコースを選んだがゆえの結末でした。
ダッシングブレイズ関連の馬券を買っていた方々からすれば、
痛恨の想いをしたことでしょう。
馬の故障や予期せぬ動きによる競走中止であればまだ諦めもつきますが、
ジョッキーの判断ミスが原因だけに、
納得できない部分も大きい。

ラチ沿いを縫うようにして末脚を伸ばす、
いわゆる「イン差し」は見ていて鮮やか。
ジョッキーにとってはひとつの腕の見せどころでもあります。
それが成功すれば好騎乗と讃えたくなるし、
勝利への執念や度胸を具現化する騎乗にも映り、
馬券を買う側からしても印象は悪くありません。

しかし、それは常にリスクと表裏一体。
今回のアクシデントを目の当たりにして、
改めてラチ沿いの危険な攻防は避けられないものかと考えさせられました。


最初に確認しておかねばならないのは、
他のジョッキーの進路妨害によって起きた事故ではなく、
浜中騎手自身の判断で選んだコースが間違いだったということ。

とはいえ彼を責める気にはなれず..

今回の問題点は、
「なぜ本命馬があんなに危ないところを通らねばならんのか」ということ。
一発ワンチャンを狙う伏兵ならまだしも、
失敗が許されない立場でリスクを背負わねばならない理由とは。

その答えは「ペース」と「馬場」。ですよね。
馬券を買う際にも頭を悩ませてくれる要素ですが、
近年の競馬を象徴する傾向が引き起こす災いだという思いが強い。

本来なら脚力に長けた有力馬は、
多少の距離ロスを承知で安全に外を回るものだが、
馬群が密集するスローペースと、
開催が進んでも内側が傷まない馬場の影響で、
たとえ有力馬でも悠長に外を回っていたら間に合わなくなる。
ここ数年でそんな競馬をイヤというほど見てきた。

ならば危険を承知でラチ沿いを..という判断はそれなりに理に適ったもので、
岩田騎手を代表するように、
「イン差し」でG1のタイトルを射止めたケースも数多く、
馬主や調教師もそれをリクエストする。

しかし、失敗するとご覧の通り。

ラチ沿いの攻防は確かにスリリングで見応えがある。
しかし、混戦とはいえ単勝1番人気の馬が、
イチかバチかであの位置を狙う状況は果たして健全なものか。
有力馬がリスクを抱えながら戦う状況をどうにかしない限り、
同じような事故は繰り返されてしまう気がする。



とはいえラップの後継化に歯止めをかけることはできないだろう。
ひと昔前では考えられなかった上がり時計の速さは、
生産・育成・調教の技術向上の証であり、
これを否定するのは本末転倒。

馬場に関しても、
馬の故障防止にあれこれと策が講じられている中で、
「いい感じに内が荒れるように」という注文は無茶な話。
馬に優しい馬場を作った結果、
人が危険にさらされたというのも皮肉なことだが。

うーん、どうすればいいんだろう。

とりあえず危険を回避するために、
ラチ沿い1頭分だけ芝の色を変えるとかしか策が思いつかない。
野球の外野のウォーニングゾーンみたいな感じで、
「はい、ここは空けときましょうねー」と注意を促す。
もしくは入ったらアカンところに線を引くとか..
通ったらその時点で失格、みたいな。

アホみたいなヌルいルールだけど、
何らかの規則でもって危険な攻防をなくさないと、
腕の立つジョッキーたちが次々に戦線を離れることになってしまう。
残念ながら今回の浜中騎手も、複数箇所の骨折が判明。
具体的な治療期間は分からないが、
しばらくの間は休養を余儀なくされるだろう。



たまに20年くらい前のレース映像を見ると、
直線の馬群がガバガバで驚くことがある。
弱っちい馬はもう脚が残ってなくて、
ありえない程に外を回しても差し馬が十分に間に合ってる。
なるほど、これならインで渋滞は起きないし、
有力馬に乗っている騎手もリスクを犯す必要はない。
今回の落馬みたいなことも起こる可能性は低くなるし、
進路妨害で騎乗停止になることだって少なかった。
※その代わり馬のクセは今より質が悪かったとは思うけど

時間を戻すことはできないし、
起こった変化に対して適応するのが人間の使命なので、
この問題もどうにか乗り越えていくしかないのだが..