僕は昔から本当に苦手なことが多くてね。

算数は中学受験の段階から置いてけぼりになり、
高校の時には学内の選抜試験で1点を取ったこともある。
小さい頃から水が怖くて、未だに25mを泳ぐのが精一杯。
海に遊びに行っても沖に出るときは浮き輪が必携アイテム。
取扱説明書を見ながら家具を組み立てるのも大キライで、
IKEAで買った棚を作っている途中に破壊したのも記憶に新しい。
空間把握能力ゼロを感じさせる絵画を仕上げることに定評があるし、
図工の時間で埴輪を作った際には中年風の小太り体型が完成した。

力仕事は適性外だし、他人を思いやるとか喜ばせるとかも比較的どうでもいい性分なので、
今の仕事がどうにもならなくなった場合どう身を振ればいいのか悩ましい。

それくらい、苦手なことが多い。

ゴールドシップが過去2年、悔しい思いをしてきた春の天皇賞。
一度はスキップする予定も報じられていたのが一転、
出走に踏み切った結果「三度目の正直」で勝利。
これまでは不向きな条件では「もうええわ」とばかりに責務を放棄することもあったが、
今回は意地の大激走。
勝ち方としてはこれまでで最も不格好だったかもしれない。
いつもはワンサイドで勝つのに、
今回はフェイムゲームにあわやというところまで追い詰められた。
※1馬身以内の僅差で勝つのは2歳時のコスモス賞以来
だが、そのなりふり構わぬ姿勢に、勝ちへの意欲がひしひしと感じられた。

「できない、向いてない。諦めよう」で逃げるのは簡単。
しかし、何度かダメでも続けてトライすることで、
今までとは違う結果が出ることだってあるかもしれない。
それが人としての価値を高めることになるし、
ああ頑張ってよかったなという充実感や満足感の源となる。

さあ、あなたは明日から何にチャレンジしますか。

●馬場
例年通りインコースが圧倒的有利な高速馬場。
当日8Rの鷹ヶ峯特別では武豊がメイショウライナーで内を突いて勝ち、
9Rの糺の森特別ではカラフルブラッサムで大外を回って4着。
恐らく色々と試しながらの騎乗だったと思われるが、
この時点で「こりゃアカンわ」と覚悟していたかもしれない。

●ラップタイム
12.7 - 11.4 - 12.0 - 12.5 - 12.8 -
12.2 - 12.1 - 12.8 - 12.4 - 12.3 - 12.5 -
12.0 - 11.7 - 11.8 - 11.5 - 12.0
= 194.7 (av. 12.1)

13秒台に緩む地点がない消耗戦。
ちなみに昨年との比較でいうとほぼ変わりないラップ。
ただ、上がり3Fを比べると今年の方が0.5秒遅く、
どちらかといえば今年の方が我慢比べの色が濃かったか。

15年: 61.4-74.3-59.0 = 194.7
14年: 61.7-74.6-58.8 = 195.1
※5F-6F-5Fでレースを三分割

馬場がいいせいで立ち回りの巧さが問われることには間違いないのだが、
ただ機動力だけでどうにかなるレースでもない。
昨年のウインバリアシオンやホッコーブレーヴのように、
仕掛けのタイミングを遅らせて馬群を割るステイヤー血統が輝く舞台。
ラブリーデイを狙ったのはミス。これは来年も覚えておこう。

13年: 59.4-72.8-62.0 = 194.2

そして13年のマジキチハイペースが際立つ。
あれは後ろから行く馬にはどうしようもなかった。

●隊列
ゲート入りを嫌がったゴールドシップ、
あわよくば先行策もと鞍上は考えていたかもしれないが、
いつも通り鈍い出脚で最後方から。
キズナも例によって後方待機策。
先行争いは田辺裕信のクリールカイザーが思い切って逃げ。
行ければ面白かったスズカデヴィアスは2番手に控え、
以下、内からカレンミロティック。
ラブリーデイもソツなく5番手あたりを確保。
一発を狙うサウンズオブアース、ウインバリアシオン、アドマイヤデウスの3頭は中団から。
アドマイヤデウスはやや気負いが目立ち、折り合いがつかぬままバックストレッチへ。

そして残り1200m。

横 山 典 弘 が ム チ を 入 れ る 。

この瞬間の場内は盛り上がったねえ。
しかもちゃんとそのゴーサインにゴールドシップも反応。
グングンとポジションを押し上げ4番手の外に。
そして先行勢の後ろで再び息を入れてラストスパートの態勢を整える。
その間にキズナも少し前との差を詰めにかかり、
サウンズオブアースやホッコーブレーヴがロスなくコーナーをクリアし直線へ。
フェイムゲームはまだ中団のまま。

●直線の攻防
先に抜け出したカレンミロティックが踏ん張る。
直後までゴールドシップが迫るもなかなか差が詰まらない。
ラブリーデイとサウンズオブアースは脚色劣勢、
変わってラチ沿いからラストインパクトが強襲。
残り50mのところでついにゴールドシップが先頭、
しかしそこに大外から襲いかかってきたのはフェイムゲーム。
あわや差し切りかという脚色だったが、
わずかにゴールドシップが追撃をしのいだところがゴール。

●ひとことメモ
・ 1着 ゴールドシップ
得意の常識破りで「三度目の正直」を成し遂げた。
ゲート入りをゴネるという新ネタまで披露、
みんながビビっていた逃げの奇襲もスタート二完歩で断念。
そしてバックストレッチからの6Fロングスパート。
勝つならこの方法しかないというレース運びを実践し、
ギリギリ残してしまったノリさんの手腕。
どうやら、出走へと翻意させたのは鞍上の進言もあったようだ。

実はゴールドシップが天皇賞・春に出走を決めるにあたり、この横山典も一枚噛んでいたのだと言う。

「須貝先生が当初天皇賞は使わない方向だと聞いた時、『秘策があるから』と口説いたんですよ。ですから、いい結果を出さないとな、ってプレッシャーもありましたし、レースはどうしようこうしようとずっと考えていました。だから、もちろん馬もよく頑張ってくれましたし、自分としてもよく諦めなかったな、よく走らせることができたなと思いますね」

■横山典ゴールドシップ常識外れの春の盾V どうしたキズナ……不振原因は精神面? - スポーツナビ

次は宝塚記念で三連覇の偉業に挑戦。
かなり厳しいレースになったし、
ゲート再審査もあって調整も難しくなるとは思うが、
「ここは譲れない」というプライドを見せてくれると期待。

・ 2着 フェイムゲーム
やっぱり人気薄ハーツクライの一撃は怖い。
あとから見直すと脚色とんでもない。よく交わされなかった。
結果的にAJCCで身動きを取れず沈んだ2頭のワンツー。競馬って難しい。

・ 7着 キズナ
「今さらスタイルを変えるつもりはない」と公言していた武豊。
だが、ケツから外を回っての追込みで勝てるレースじゃないことは、
ここ数年の傾向でわかっていたはず。
キズナならそれをも打ち破ってくれると信じていたのか、
あるいは厳しいとわかっていた上でこう乗るしかなかったか..
僕は後者だと思う。
変えたくても変えられない後方一気のスタイル。
前向きな気性もそうだし、
タメないと弾けないディープインパクト産駒の宿命にも逆らえない。
「わからない」や「骨折の影響でギアが」と陣営は話していたが、これは必然的な敗戦。
少しでも客観的な立場から見ればわかること。

・ 8着 ラブリーデイ
結果的には脚をなくして失速も、内容的には満足。
立ち回りに活路を見出したい状況で、
ソツなく5番手を取ったルメールはさすが。
正直、4角まではいい感じすぎてゴールドシップよりこちらばかり見てたくらいw
よくがんばってくれました。

・ 9着 サウンズオブアース
直線入り口までは完璧な競馬も、
あそこから伸び切れなかったあたりは距離の問題か。

・ 10着 デニムアンドルビー
後方ままで空気。さすがに過大評価でした。

・ 12着 ウインバリアシオン
直線で故障を発生。とうとう競走能力喪失で引退が決まった。
二度の長期休養を乗り越えて、G1を争ったその道のりに拍手。

・ 15着 アドマイヤデウス
折り合いに苦労して早々に失速。
力負けではないので宝塚記念での巻き返しとか普通にありそう。

・ 17着 スズカデヴィアス
逃げることもできず大敗。まあ仕方ない。
夢をありがとうございました。



ラブリーデイに浮気するなど、心中いろいろと複雑だった天皇賞。
だが、ずっと願っていた「高速馬場で勝つ」という思いが実を結んで、
久々に心からうれしかった。
現地でゴールドシップの勝利を見たのも菊花賞以来。

■今年もさすがの入り


15時に家を出て、スタンドに到着したのが15時25分ごろ。
ちょうど本馬場入場が始まるくらいのタイミングで、
ビッグスワンを出たあたりはもう動けないくらい人だらけ。
これではいかんと4角方向へ避難すると、どうにか立つポジションは確保できましたが、
春の天皇賞は滑り込みで見に行くもんじゃないですね..
つーかみんな好きやなあ競馬。

■信心が足りてない、全然足りてない



あとアレですね、
ついにメジロマックイーンの血統が春の盾を取りましたね。
それを成し遂げたのが、
マックイーンの主戦..ではなくライアンの主戦ではありましたが、
当時のことを知る乗り役さんがそのバトンをつないだのはええ話。

>関連エントリ:
□天皇賞はラブリーデイの一撃に期待!あとでチラ見してきます
□天皇賞で|゚Д゚)))コソーリと狙ってみたい魅惑の伏兵たち
□三度目の正直へゴールドシップ、春の盾に再チャレンジの巻

□【回顧:天皇賞】ゴールドシップ完敗、そしてフェノーメノ連覇<現地レポ> ※2014年
□【レース回顧:天皇賞】ゴールドシップ不覚..思わぬペースに苦戦 ※2013年