先週土曜、京都芝1600mで行われた新馬戦。
アグネスタキオン×ビワハイジの素質馬アドマイヤオーラが初戦を飾ったわけだが、
2着のグッドラックアワーやハンティングダラー、
出走を取り消したギンギラギンなど、
デビュー前から高い評価を得ていたメンバーが揃う一戦だった。

秋の京都開催で、来期のクラシックを狙う若駒がベールを脱ぐ。
2歳馬のデビュー時期がやや早まっている傾向にあるとはいえ、
根付いた伝統は今も変わらない。
しかし、ある事柄に時代の変化を感じずにはいられなかった。
それは、このレースが父内国産限定戦だったということ。
かつてマルチチ限定戦といえば、
劣勢のカテゴリ救済の意味合いが極めて強かった。
重賞レースも年間に3つ組まれており、
例えばファンドリショウリのような名脇役を生む舞台も用意されていた。

===
ファンドリショウリがマルチチ重賞を2勝したのが96年。
ちょうど10年前である。
当時のサイアーランキングを見てみると・・
おお、懐かしい。
いわゆる「種牡馬3強」が圧倒的な存在感を示す中で、
ニホンピロウイナー、サクラユタカオー、アンバーシャダイ。
彼らが「父内国産の雄」と呼ばれ、
マルチチのGI馬が誕生しては朗報として伝えられた。

時代は着実に変化を遂げている。
今やサンデーサイレンス2世種牡馬の活躍もあり、
「マルチチのGI馬」は珍しくも何ともなくなった。
雷神カネヒキリを輩出したフジキセキのようなランク上位のサイアーだけでなく、
キングヘイローみたいな中堅種牡馬(恐らく来年の評価は一気に高まるだろうが)も、
無敗の二冠牝馬カワカミプリンセスを送り出すほど国産種牡馬の質は上がっている。

SS直仔が途絶えた2歳戦は、特にその傾向が顕著。
これまで行われた2歳重賞5戦はすべて父内国産馬が勝った。
先週のファンタジーSは出走14頭中マルチチが12頭。
こんなことはちょっと前まで考えられなかった。
そして、先週の新馬戦のようなハイレベルの一戦が、
父内国産限定戦だと気付かないこと自体が象徴的な現象と言える。
やがてはJRA賞の「最優秀父内国産馬賞」も廃止されたりするのだろうか。

もっとも国内ツープラトンとして君臨するディープインパクトとハーツクライがSS産駒である以上、
輸入種牡馬が猛威を奮った時代から一気のシフトチェンジが起こったとは言えない。
今年の二冠馬メイショウサムソンもオペラハウス産駒。
わずかな遺児に期待を託すエンドスウィープ産駒らとともに、
しばらくはマルチチ勢と均衡状態が続くことになるだろう。

SS産駒がいなくなった今年の2歳世代が、時代の分水嶺になりそうな予感。
まずは91年トウカイテイオー産駒以来の「マルチチダービー馬」の誕生なるか、注目したい。

===
96年というと、ちょうど自分が競馬を見始めた頃。
この10年間で時代は大きく変わったんだなということを、
先週の2歳戦で改めて感じさせられた。
懐かしさついでに、騎手ランキングも見てみて下さい。
こっちはあまり変わり栄えしませんね。
確かに岡部幸雄、的場均、河内洋など存在感あるベテランは引退したけど、
あとは今のリーディング常連のメンバーと特に変化なし。
馬の勢力図は着実に変化しているのだから、
人のほうも新しい勢力がどんどん出てこなければ。