セレクトセールといえば日本競馬の夏を彩る一大イベント。しかし、毎年その話題は気にかけてはいるものの、リアタイでその様子を追いかけたことは今までなかったなと思い、今年はYouTubeの中継を仕事のBGM代わりに流していた。

これがなかなかいい。

「にせんよんひゃくまーん、にせんよんひゃくまーん」といったおなじみの掛け声から、「ディープインパクトの肌にモーリス、令和のスタンダード配合でございます」などの宣伝文句など、オークショニアのリズムのいい進行が実に聞き心地がいい。で、ぼやーっと聞いてると時に超高額取り引きの馬が出てきてついつい画面も食い入るように見てしまうという。

高値がついた馬はニュースにもなって一時的に話題にはなるんだけど、その馬がデビューする頃にはすっかり忘れているというのが例年のパターンでもあった。それはあまりにもったいないだろうということで、今年は覚えておきたい幼駒のことを自分なりにまとめておこうという試み。

それでは初日に行われた1歳セクションから。



● ポロンナルワの2019(牡馬・父ハーツクライ)/12,500万円・エフレーシング
トップバッターからいきなり1億円越え。シンハリーズの牝系で、上にディーパワンサ・ガルヴィハーラ・アヌラーダプラとコンスタントに活躍しているのが心強い。どちらかといえば軽快さが売りの血統にハーツクライの底力が加わることで、もうワンランク上のステージを目指すことになるだろうか。ちなみに購買者の「エフレーシング」はどうやらラウンドワンさんのことらしい。今季の2歳馬にはサンデージャックやサンデーアーサーなどの高馬がいるが、それに続く期待馬の誕生といったところ。

● ダイヤモンドディーバの2019(牡馬・父キズナ)/6,800万円・Y's consignment sales
ちょいちょい評判になるが、まだ目立った大物は出せていないダイヤモンドディーバ。今季の2歳馬ディアマンテールも6月東京の新馬戦で5着に敗れた。しかしまだまだ評価は激落ちとはならず、6,800万円での落札となった。購買者「Y's consignment sales」が誰の代理人なのかはわからず。

● ライツェントの2019(牡馬・父ハービンジャー)/6,000万円・金子真人ホールディングス
ディアドラの全弟が金子真人HDさんのもとへ。強そう。しかしこの兄弟は当たり外れが激しいタイプで、今年3歳でデビューしたナバーラは新馬戦で大敗しただけでもう抹消。こういうロマンを追うのもセレクトセールならでは、だろうか。

● キャンプロックの2019(牡馬・父ディープインパクト)/19,000万円・野田みづき
残り少なくなったディープインパクトの産駒、1歳馬セールで最初に登場したこの馬にも当然のように高額落札となった。母キャンプロックはフランス産で正直まだまだ未知数な部分も大きいと思うのだが、しかも初仔?違う? ミッキー冠名で来年デビューすることになるだろうが、期待と不安が入り交じる一頭。

● プラウドスペルの2019(牡馬・父ドゥラメンテ)/16,000万円・廣崎利洋HD
思いもよらぬスロースタートになってしまったドゥラメンテ産駒だが、セールでの売れ行きはまずまず堅調だったのでは。この馬も上がプラウドスペル・グレートウォリアーとそこまで大活躍級というわけではないのだが。ただ、グレートウォリアーは脚元の関係でダートを使っているが底を見せていない魅力はあるだけに、弟に爆発力を託したのかもしれない。

● ラッドルチェンドの2019(牡馬・父オルフェーヴル)/7,800万円・サトミホースカンパニー
先日の新馬戦を完勝したダノンシュネラの半弟。評価が下がっていた世代のオルフェーヴル産駒だが、ここに来て盛り返し傾向にあるだけにこういう血統から大物が出て欲しい。しかし全姉は中央未勝利..うーむ。

● テディーズプロミスの2019(牝馬・父ディープインパクト)/24,000万円・キーファーズ
ディープインパクトに替わったマイラプソディの半妹。当然のようにキーファーズが落札。兄は結果的に春のクラシックではまともに壁にぶち当たってしまったが、それまでの走りは期待感あふれるものだっただけに、オーナーの気迫が落札価格からも伝わってくる。

● フォエヴァーダーリングの2019(牡馬・父ディープインパクト)/40,000万円・ダノックス
初日のビッグディールその1。米国産の母とディープインパクトとの間に生まれた貴重な牡馬。牝系を遡ればゼンノロブロイやキャットコインなど日本で活躍している馬にもつながる。あとは半姉モンファボリが先日の新馬戦をレコード勝ちしたのも大きな宣伝になった。仕上がりも早そうで来年の今ごろにはもうデビューしているんじゃないだろうか。

● アブソリュートレディの2019(牡馬・父ディープインパクト)/22,000万円・金子真人ホールディングス
ひそかに注目していたのがこの馬。仏オークス馬ラクレソニエールの半弟でディープインパクト産駒という世界的名血が、誰にどの程度の評価を受けるのかと期待していたら、金子真人HDさんのもとへ。これは半姉グラヴィルのデキがいいということでよろしいか? お姉さんが活躍して、来年はこの馬を指名みたいな形になれば最高。

● チェリーコレクトの2019(牝馬・父ハーツクライ)/14,500万円・麻布商事
ワーケアの全妹を落札したのは、今年のセールの台風の目として躍動した麻布商事。最初は誰やねん扱いされていたが、どうやらABCマートの社長である三木正浩氏の所有馬ということになりそうだ。現2歳馬も数頭登録されているが、しばらくは存在感を放つことになるのだろうか。長続きはしなさそうだが..w

● デアリングバードの2019(牝馬・父エピファネイア)/4,900万円・サラブレッドクラブライオン
二冠牝馬デアリングタクトの全妹は4,900万円。姉が1,200万円でしたっけ?比較的静まった雰囲気の中でノルマンディーさんに買われた当時のことを覚えている人はいるのだろうか。さて、偉大な姉の4倍もの評価を受けた妹はどれだけ走れるだろうか。ライオンさんとしては募集時の看板馬的な役割も期待しての落札だろう。

● シーヴの2019(牡馬・父ディープインパクト)/51,000万円・国本 哲秀
何と言っても初日の話題をさらったのはこれ。全兄サトノスカイターフも評判馬だが、それをも上回る期待を背負うことになった。インパクトが大きかったのは価格のみならず落札者。普段ここまでの高額馬には手を出さない「ショウナン」さんが参戦してくるとはどういう風の吹き回しか。「何度も下見していた」というくらいのお気に入りの一頭のようだが、この思い切った買い物が吉と出るだろうか。

● ライラプスの2019(牡馬・父ロードカナロア)/3,700万円・近藤 旬子
これはびっくり。てっきり馬主から撤退する方向だと想像していた近藤旬子さんが落札。1歳セールで2頭、当歳でも1頭を落札されており、もうしばらくはアドマイヤの勝負服が見られるのだろうか。

● ザルソバの2019(牡馬・父ゴールドシップ)/主取
2日間を通して唯一の上場となったゴールドシップ産駒だが、残念ながら主取に。この悔しさをバネに活躍してくれることを、この時はまだ誰も知らないのであった..



はい、おつかれさまでした。どうしてもミーハー選定になってしまうけど仕方ないよね。これらの馬がデビューしたら「ああ、あの時の!」と言えるようしっかり記憶にとどめておきたい。そしてPOGの検討にでも役立てば..

当歳セールはまた別の記事で。



2日間のセール結果もリンク貼っておきます。