アークライトは痛恨の黒星デビュー。今季のディープインパクト産駒の牡馬の中ではトップクラスの評判馬として期待を背負いながら、いきなり厳しい現実を突きつけられることになってしまった。

色々と不安はありましたよね。

そもそも育成段階での威勢のいいコメントが、入厩してからは聞かれなくなった時点で「あれ、もしかして..」ですよ。馬体が大きい分キレを感じないとか言われたりしながら、馬なり追い切りを重ねても能力は測れず、挙句の果てには「東京の馬場が悪いから」という何とも言えない理由で函館にワープ。本馬場での追い切りも相変わらずソフトな内容で、走るという手応えが得られないまま迎えたデビュー戦だった。レース前に唯一ポジ要素として受け入れられたのは馬体重が510kgとそこそこのサイズに収まっていたことくらいか。

内容もハッキリ言って悪い。

出遅れたなら今後のことも見据えて馬群の中で我慢を覚える教育を施してくれればいいのに、超スローペースを嫌ったのかルメールがバックストレッチから加速してハナを奪う形に。これが結果的にアランデルにとってちょうどいい標的となり、早めに外から圧力をかけられると、ゴール前で差されクビ差だけ先着を許す形に。せめて負けるならタメてどれだけの脚を使えるかを試すなど、何らかの収穫を得たいところだった。

そんな敗戦だっただけにレース後はまあまあ頭を抱えたものだが、時間が経ってからラップタイムを見直すと、少しだけ希望がわいてきたのである。



以下は、今週の函館芝1800mで行われたレースの後半5Fのラップタイムである。

・7月4日12R:北海ハンデ(勝ち馬ジョブックコメン)
12.3 - 12.2 -12.0 -12.1 -12.1 = 60.5

・7月5日4R:3歳未勝利(勝ち馬ナムラショウグン)
12.5 - 11.8 - 12.2 - 12.1 - 12.2 = 60.8

・7月5日5R:2歳新馬(勝ち馬アランデル)
12.3 - 12.1 - 11.9 - 11.6 - 12.2 = 60.1

・7月5日11R:巴賞(勝ち馬トーラスジェミニ)
11.9 - 11.9 - 11.6 - 11.5 - 11.9 = 58.8

前半のペースの違いはあれど、アークライトの作ったペースは古馬2勝クラスの北海ハンデよりも速い。このラップをびっしり外からマークされて、ゴール前まで脱落せずに済んだってなかなか大したもんじゃないの? まして本来なら小回り洋芝でロンスパ合戦など不向きもいいところのディープインパクト産駒ですし。仮に不本意ながら前受け消耗戦タイプに育ったとしても、ここから使った上積みなど考えればこの形でも勝負できるかもしれない。

参考までに昨年の同条件で行われた新馬戦の後半5Fのラップも調べてみた。

・ 7月7日:勝ち馬オーソリティ
13.6 - 13.3 - 12.3 - 11.5 - 11.9 = 62.6

・ 7月14日:勝ち馬サトノゴールド
12.9 - 12.3 - 11.9 - 11.2 - 12.0 = 60.3

・ 7月21日:勝ち馬ダーリントンホール
11.9 - 12.1 - 12.5 - 11.5 - 11.6 = 59.6

全体のラップも重要だが、5F目(つまり表の最初の1F)が速いか遅いかを見てほしい。オーソリティ組にせよサトノゴールド組にせよ、5F目ではまだペースは上がっておらず、バックストレッチではゆったり息が入る流れだったことがわかる。オーソリティ組に至っては先行勢のペースが上がらず団子状態のまま4角を迎えることになった。その点、優秀なのはダーリントンホール組で、序盤からガクンとペースが落ちないまま中盤→終盤も平均的にまとめている。

もし、オーソリティ組のようなヌルいペースで逃げながら負けたのであれば今後の見通しも苦しいところだったが、思わぬ形で初戦から厳しいレッスンを受けられたと解釈すれば敗戦のモヤモヤも緩和される。単に一度レースを経験した以上の上積みが見込めそうじゃないか。

本当ならこんなことまで調べずともスカッと勝ってくれればよかったんだけどな!