これは.....いい。
世の中には楽しいコンテンツがあるもんだ。
「孤独のグルメ」である。

水曜深夜のタイムラインを賑わす話題作。
どうせみんな見てるから乗っかってるだけじゃないの?と思いつつ、
どんなドラマなのかを見ている人に聞いてみたら、
「おっさんがごはん食べてるのを見るドラマ」とか言いやがる。
そんなもんどこがおもしろいねん。

と言いつつ試しに見てみたところ....

いい、いいぞ....。

確かに聞いた通り、恵体のおっちゃんがひたすらご飯を食べてるだけである。
だがその一連の流れが秀逸。
たまたま仕事のついでに立ち寄った、見ず知らずの店で、
メニューを見て気になった品を注文し、食べる。
誰もが経験したことのあるようなシーンがそこでは繰り広げられている。
深い解釈、考察など一切不要。あるのはただ「おいしそうだ」という感想だけ。

原作はマンガのようだが、
これだけのヒット(と言っていいのかはわからんけど)を生み出した理由は、
何となく分かる気がする。

● どこにでもありそうな庶民派のお店が舞台 ※ロケ地は実在するお店らしい

● ゴローさん(おっちゃん)の独り言が楽しい

● 松重豊さんが渋い

高級なお店でうまいもんばかり食べてても、ここまでの共感は得られない。
誰でも行けそうな中から「当たり」の店をちゃんと引くゴローさんだからこそ、
みんな羨望の眼差しを送ることができるのだ。

また、セリフそのものは極めて穏やかな人柄のゴローさんが、
食事に対する独り言となると途端にポエム的になったり好戦的になったり、
豹変するのもまたおもしろい。
「人間は本来、食に対し自由だったはず。オレは今、遊牧民になるんだ..」とかね。
いちいち大げさなのが笑える。ちょっとコピーライティングの要素も含んでるし。

それからゴローさんを演じる松重豊さんの渋さ。
いくら「おっちゃん」と言っても端正なマスクのベテラン俳優さんである。
見ていて清潔感があっていい。
ドラマの終盤には原作者さんが出てきて同じメニューを食べるんですけど、
やっぱり絵的にこっちは若干キツい(見ないもん)。
松重さんの表情というか、食べるときの演技もまたさすがで、
よくこんなにおいしそうに物を食べられるなと感心させられる。

個人的に一番惹かれたのは、
初めて見た回で煮魚を食べていた場面で、
口の中の小骨を手でピッと取り出すシーンがあったんですよ。
いわゆる「ちょっとお行儀が悪い」仕草で、それでいて誰もがやったことのあるような。
たぶんこれ、松重さん演技じゃなくて咄嗟にやっちゃったんだと思うんですよ。
NGにしようと思えばできたはずなのにOKにするその判断基準が素晴らしい。
あくまで自然な食事のシーンを表現するという姿勢に感心しました。
他にも、何かどんぶりの中の具をかき混ぜてた時だったかに、
中身がちょっとこぼれ落ちたけどそれも全然セーフ。
こういうのたまりません。

基本的に一話完結で、何ひとつややこしい人間関係なども描かれておらず、
これほど「次回が楽しみにならないドラマ」というのも他にないような気がするが、
毎週録画した分を週末に見るのが習慣づいてしまっている。
ハマる、とはこういうことを言うのだ。