5位に低迷する阪神の話題はシーズンが終わった頃に軽く触れる程度かと思っていたが、
驚きのニュースが飛び込んできたもんだからこれはさすがに書かざるを得ない。

金本知憲(44)が現役を引退――

先は長くはないとは思っていたが、
それでもこんなに早くこの日が来るとは思ってもいなかった。

晩年こそ肩の故障と身体の衰えに苦しみ精彩を欠きまくったものの、
まぎれもなく歴史に名を残す偉大な選手だった。
打者としての記録もさることながら、
その代名詞的な記録である連続フルイニング出場に代表されるように、
とにかく野球に対する真摯な姿勢が強く印象に残っている。

FA宣言により広島から阪神に移籍した03年は、
ちょうど星野仙一監督によるチーム改革が始まった頃で、
若い芽が徐々に芽生え始めてきたタイミングで「生きる教材」が加入したことで、
瞬く間にペナントレースを快走できる闘う集団へと変貌を遂げた。
その後はまさに不動の四番打者としてチームを牽引。
どんな大ケガを負っても痛い素振りすら見せず試合に出続ける姿は、
僕にとっても生きる教材と感じたこともあった。
仕事を始めた直後、うまくいかないときは、
「金本が誰よりも一番練習してるんやから自分はもっとやらなあかん」と奮い立たせたりして。
いや、恥ずかしい話ですけど。

守備の衰えが顕著で、
もっと早く引退、いやせめて代打稼業に専念すべきとの声は多かったし、
僕もそうすることでチームはいくらか好転するとは思っていたけれども、
あの弱っちかった阪神を、
リーグでも上位の戦いができる集団へと生まれ変わらせてくれた恩人だけに、
「もう気の済むまでやってくれたらええ」と達観していたり。
それだけに、自分の意志でユニフォームを脱ぐタイミングを決めてくれたことは、
素直によかったと思っています。

しかし、引退するタイミングで阪神が久しく経験していなかった暗黒ぶりを漂わせているのが、
何とも皮肉というか..
まるで「強い阪神」という夢を見せてくれるがためにタテジマに袖を通してくれたかのよう。
やらかし癖はあったものの、いい時間を過ごさせてくれました。

本当にありがとうございました。