◇京都11R 天皇賞
1着◎ディープインパクト――58武豊
2着○リンカーン――――――58横山典弘
3着・・ストラタジェム――――58G.ボス
・・・・・・
4着☆アイポッパー―――――58福永祐一
7着▲マッキーマックス―――58藤田伸二
10着△デルタブルース――――58岩田康誠

≪回顧≫
これが2006年版、世界規格の衝撃というやつか。
◎ディープインパクトが従来のレコードを1秒更新する圧勝。
クラシック三冠に次ぐ4つ目のGIタイトルを獲得し、
夏以降に待っている海外遠征へ向け最高のパフォーマンスを見せた。

スタートでは久々にはっきりとした出遅れ。
1周目スタンド前までは後方から2頭目を、落ち着いて追走。
課題だった折り合いを、見事にクリアしてみせた。
圧巻だったのは3角からの下り坂。
武豊がガッチリと手綱を持ったままながら、一気に先行集団を飲み込んで先頭へ。
昨年はほとんど見ることのなかった、
「マクって進出→4角先頭」の破天荒なレースぶりが、
ディープインパクトの新しい姿であるように映った。

プレッシャーからの開放が、英雄を再び滑走路に乗せたのだろう。
絶対に負けるわけにいかなかった「無敗の三冠馬」。
その立場が、どうしても武豊に安全策を取らせていた。
昨年のダービー、菊花賞、そして有馬記念。
スパートに入っていたのはいずれもセオリー通り直線に入ってから。
それで同世代のライバルたちは難なく退けたが、
有馬記念では「世界の」ハーツクライの前に完敗。
だが、初めて喫した敗北は、重苦しいプレッシャーを打ち消してくれた。
「好きなように走って、それで勝てばいい」。
そんなリラックスムードで天皇賞を迎えることができた。
武豊も菊花賞・有馬記念の当日は意識的に騎乗数を抑えていたようだが、
きょうはほぼいつも通り9鞍に騎乗。
ディープインパクトの騎乗を必要以上に意識せずに済んだのも、
重圧から開放された証。
自然体で臨んだ英雄と天才の躍動感が伝わってくる、「4角先頭」だった。

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直線で唯一、抵抗するシーンを見せたのは○リンカーン
好位でピタリと折り合い、
先に抜け出したディープインパクトめがけて追撃を見せたが、相手が悪かった。
差を詰めるどころかゴール前では逆に返り討ち。
それでも3着には5馬身のアドバンテージを取り、
自身もマヤノトップガンのレコードは更新している。
やることはやった。悔いのない敗戦だろう。

3着には伏兵ストラタジェムが突っ込んだ。
鞍上のG.ボスが勝負どころでうまくインコースで脚をため、
直線の入り口で外に持ち出してスパートに入る好騎乗。
条件戦を含め、これまで京都では勝ち星がなく切れ味勝負では見劣ると思われたが、
菊花賞5着が示す通り長丁場には適性があったということ。
常にコンスタントに力を発揮する堅実派が、
大舞台で密かに存在感をアピールした。

☆アイポッパーはなす術なく敗れた前走とは違い、しっかり末脚を伸ばした。
4角までなかなか動けなかったために、
ゴールまで少し脚を余した格好になってしまったが、まずは復調気配。
2000m程度ではさすがに分が悪そうだが、
これからもいわゆるクラシックディスタンスなら一線級相手にも十分に通用しそうだ。
マラソンの高速決着なら▲マッキーマックスの出番かと思われたが、
4角でだいぶ手応えに余裕がなくなっていた。
3〜5着に突っ込んだ面々が、
内をうまく回ってきたのに対して少し正攻法で行き過ぎたのかもしれない。
コース替わりで逆転のシナリオを描いていた△デルタブルースは、
昨年の有馬記念に続いて後方からの競馬で流れ込んだだけ。
「滑り台」はディープインパクトに取られるし、まったくいいところがなかった。

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ディープインパクトが世界に翔び立つ前哨戦として、
近年にない緊張感を保つことができた春の天皇賞。
衰退の危機に瀕している長距離路線だが、
やはり強い馬がしっかりとした競馬をすれば見どころは満載なのだ。
それを実証してくれたディープインパクトはやはり偉大。
日本競馬の伝統をないがしろにすることなく、
春の天皇賞に狙いを定めてくれた池江康郎師の英断も見逃せない。
さすがは名優メジロマックイーンを育てた名伯楽である。
それと同時に、リンカーンの健闘も光った。
せっかくディープインパクトが勝っても、
2着に説明できないような穴馬が突っ込んできていては、
「弱メン相手の圧勝」という評価を脱し得なかっただろう。
荒れ果てた春の天皇賞。
単勝1番人気の馬が勝つのは01年テイエムオペラオー以来。
上位人気のワンツーで決まったのは02年のマンハッタンカフェ−ジャングルポケット以来である。
淀の長距離戦に、かつての由緒正しき伝統が帰って来たことを、
英雄の圧勝とともに喜びたいと思う。
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